「手話で語るSHG~手和会」9/7報告レポート

報告レポート

文責:日本聴覚障害者心理協会 小坂

昨日9/7に初めての「手和会」が行われました。

おそらく日本でははじめての手話によるセルフヘルプグループになるだろうと思います。

「手和会」とは聴心会の活動グループの一つであるセルフヘルプグループの愛称です。この「手和会」のテーマが”家族”なので、家族に問題を抱える方が集まりました。

私は今回ファシリテーターを担当し、参加者に情報を与え、語るきっかけを作り、自発的にどんどん話してもらうための役割に徹しました。ここで重要なのは、一人たりとも「私だけふられるのが少なかった」のように不完全燃焼にならないようにすることです。これがとても難しかったです。

その効果があったのか、最初怪訝そうな顔をしていた女性が、終わるときに「来てみてよかった~」と笑顔でおっしゃっていたのをみて、うれしい気持ちになりましたね。その後、抱えている問題についてカウンセリングをしたいと申し出があったので、このコミュニティの存在意義はとても大きかったと私は思います。リーダーである駒崎さんも終わるときに「こういう会が前にあったらよかったのに・・」とつぶやいていましたが、彼女の思いがスタッフの皆さんを動かし、ここまでこぎ着けたのだから、その功績はとても評価されるものだと思います。

次回は11月30日(金)に行われます。「家族」について、悩んでいる方は是非ご参加ください。次回も定員10名とさせていただきますので、どうぞよろしくお願いします。

※参加者のみなさまには、名前をお互いに言わない、聞かない、他言無用という約束をお願いしてあります。

■スタッフの感想
①準備を重ね、やっと開催できたドキドキの第一回目。皆さんに集まっていただけて嬉しかったです。やはり、自分たちの言語で安心して心置きなく語り合える場必要だと思いますし、これからもつくっていきたい。皆さんから語られる様々な想い、同じ立場、同じ経験を通して共感しあえたことでしょう。手話で語れる大切な場をこれからも継続していきたいです。

②あまり例のない活動ということで参加者が集まるか正直不安だったのですが、「手話で語る場が必要な人は必ずいるはず」、そう信じて開催した第1回手和会企画。思いがけず参加者も集まり、メンバーたちと着実に準備してきたものがようやく実現できて嬉しく思います。参加者たちが家族について語られている様子を見て、私自身も学生時代このような居場所が欲しかったな…と心から思いました。同時に、必要とする人がいる限りこの語り場も少しずつ続けていきたいと思いました。本日は参加者の皆様、ありがとうございました。また11月末に企画を予定しておりますので、ぜひご参加のほどお待ちしております!

③第1回目なのでどうなるか、正直不安いっぱいでしたが、、無事、手和会を開催出来、良かったです。参加者たちが家族に関していろいろ語っている中で、やっぱり、こういう居場所が必要なんだ、、と改めて感じました。これからも続けていきたいと思いますので、そういう、居場所、語れる場所ががあるってことを知ってもらい、色々語って頂けたらと思います。

■参加者の感想
「手話で語るSHG~手和会」に初めて参加してみました。難聴者もろう者もいて、最初はどんなお話をしたら良いか悩んだけど、進行役がうまく進めてもらえたお陰で心の中に言えないことを話せて皆さん同様の悩みを抱えていることがわかり、お互い色々話せて良かったです。私だけではないとわかり、少し安心感がしました。時間があっという間経ってしまいました。なので次回はお昼から夕方まで長めの時間があったら良いと思いました。また企画を設けて欲しいと思います。スタッフの皆さんお疲れ様でした。ありがとうございました。(ろう者/女性)

■さいごに
日本では初めてであろう、今回の取り組みは、別の意味で「聴覚障害をもつ当事者研究」にもつながります。情報保護の観点から詳細はのべられませんが、専門家としての気づきについて以下書き留めておきたいとおもいます。

様々に語られる家族の問題内容は多種多様でしたが、今回注目したのは、「愛着(アタッチメント)」でした。その例として、親が聴覚障害を持つ子どもに対して決定権を奪うなどのコントロールをしようとしている事例もでました。これは当初の対象であった「統合失調症やうつ病などの精神障害」にもつながります。「あなたは聞こえないんだから」といって、行動を制限するなどのDVとも言えるべき問題、「おねえちゃんは聞こえないんだから、あなた(おとうと)がちゃんとしてね」と知らず知らずの間に精神的重圧を与えてしまうきょうだい問題、ロールモデルや情報がないために、どのように子どもに接したらよいのかわからないという問題まで様々でした。まずはそのあたりを語ることが大事というのは言うまでもありません。

家族は社会を構成する最小単位でもありますので、それが崩壊することは社会の崩壊を意味することになるでしょう。家族のあり方が大きく変わりつつある現在、このようなマイノリティが安心して語れるコミュニティが必要であることは言うまでもありません。

この「手和会」活動に興味をお持ちで、聴覚障害の当事者研究をやってみたい方がいらっしゃいましたら、是非運営スタッフとして参加してみてください。ただし、運営スタッフに登用されるためには心理の最低限の知識など講習(8時間)があり、試験に合格する必要があります。是非チャレンジしてみてください!お待ちしております!


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